米国および英国の高齢者における健康寿命と寿命の加齢速度分析
——「Pace of Aging」手法に基づく集団縦断分析 一、研究の背景および学術的意義 世界的な人口高齢化の進行に伴い、高齢者の健康状態を客観的に評価・改善することが、各国社会政策や公衆衛生分野の重要課題となっています。従来は「寿命(lifespan)」や「健康寿命(healthspan)」といった指標で人口の高齢化を評価してきましたが、これらには限界があり、特に「出生初期要因(例えば妊娠中のケアや幼少時の栄養状態)による健康格差」と、「成人・高齢期における継続的な加齢過程に伴う可変的な健康変化」とを有効に区別することができません。従来指標では中高年期の介入策の効果をタイムリーかつ高感度で反映することが難しく、また健康格差等の集団間現象の内在的メカニズム把握も困難です。 こうした課題に対...