クライオ電子断層撮影を用いたクロマチン生体分子凝集体の定量的空間解析

学術的背景 生物分子凝集体(biomolecular condensates)は、細胞内で液-液相分離(LLPS)によって形成される膜のない細胞小器官であり、遺伝子発現やシグナル伝達などの重要な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たします。しかし、従来のイメージング技術の限界により、凝集体内部の高解像度構造情報は長らく欠如しており、その機能メカニズムの深い理解を妨げてきました。染色質(chromatin)は真核生物の細胞核内で遺伝物質を組織化する主要な形態であり、その動的な凝集と解離のプロセスは遺伝子調節に直接影響を与えますが、染色質凝集体の微細構造と分子配列の規則性は依然として不明な点が多いです。 本研究はMichael K. Rosenチームが主導し、以下の重要な課題に取り組みました:...

ヒトプロヒビチン複合体のin situ構造

学術的背景 ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場であり、その内膜(mitochondrial inner membrane, MIM)の完全性は細胞機能にとって極めて重要です。prohibitin(PHB)は高度に保存されたタンパク質ファミリーであり、PHB1とPHB2の2つのサブタイプを含み、ミトコンドリアストレスシグナリング、細胞周期制御、アポトーシス、寿命調節など、さまざまな細胞プロセスで重要な役割を果たしています。PHB1とPHB2はミトコンドリア内膜で足場タンパク質として機能すると考えられていますが、その分子組織は長い間不明でした。過去の研究では、酵母でのネガティブ染色電子顕微鏡(EM)を用いて、PHB1/PHB2ヘテロ二量体が直径約20 nmの環状構造を形成する可能性が示唆されて...