運動学習中に樹状突起の反復活動を制限してシナプス脱増強を防止するアストロサイトCa2+

背景紹介と研究の動機 神経科学の分野では、学習や記憶の過程は脳内の複雑な細胞活動の調節に依存しています。これまで多くの研究は、神経回路の再構築の物質的基盤として神経細胞間のシナプス可塑性(synaptic plasticity)、たとえば長期増強(long-term potentiation, LTP)や長期抑制(long-term depression, LTD)に焦点を当て、神経科学の発展を推し進めてきました。しかし近年、新たな研究分野である星状膠細胞(astrocytes)が脳機能に与える影響への関心が高まっています。星状膠細胞は単なる神経細胞の「脇役」ではなく、神経細胞の代謝調節、細胞外イオン環境の緩衝、神経伝達物質の取り込み、調節性分子の分泌など、さまざまな方法で神経活動やシナプス...

遠位樹状突起が新たな海馬位置場の特性を予測する

学術的背景 海馬体(hippocampus)は、空間ナビゲーションとエピソード記憶を担う脳の重要な領域です。海馬体CA1領域の錐体ニューロン(CA1 pyramidal neurons, CA1PNs)は、「場所場」(place fields, PFs)を形成することで、動物の環境内での位置情報を符号化します。場所場の形成は、行動時間スケールのシナプス可塑性(behavioral timescale synaptic plasticity, BTSP)に依存しており、これは単一のペアリング後に迅速に新しい場所場を形成するメカニズムです。しかし、BTSPの分子および回路メカニズムは広く研究されているものの、CA1PNsの遠位樹状突起(distal tuft dendrites)が場所場形成にお...