外的および自己運動の空間手掛かりがプレイスセルのθ位相多重符号化を制御する

海馬体時空コードの新展開—多重化されたθ(シータ)位相コードと外部・自運動手がかりによる調節メカニズム ——Nature Neuroscience最新論文「allothetic and idiothetic spatial cues control the multiplexed theta phase coding of place cells」を評して 1. 学術的背景と研究動機 空間ナビゲーションおよび記憶は神経科学分野で長年注目されてきたテーマであり、海馬体(hippocampus)は脳内認知マップ(cognitive map)の生成と維持に不可欠な構造として、空間情報の符号化および検索の中核的機能を担っている。海馬体がどのように内外の空間手がかりを統合し、安定かつ柔軟な空間表象を形...

遠位樹状突起が新たな海馬位置場の特性を予測する

学術的背景 海馬体(hippocampus)は、空間ナビゲーションとエピソード記憶を担う脳の重要な領域です。海馬体CA1領域の錐体ニューロン(CA1 pyramidal neurons, CA1PNs)は、「場所場」(place fields, PFs)を形成することで、動物の環境内での位置情報を符号化します。場所場の形成は、行動時間スケールのシナプス可塑性(behavioral timescale synaptic plasticity, BTSP)に依存しており、これは単一のペアリング後に迅速に新しい場所場を形成するメカニズムです。しかし、BTSPの分子および回路メカニズムは広く研究されているものの、CA1PNsの遠位樹状突起(distal tuft dendrites)が場所場形成にお...