胚性運動ニューロンプログラミング因子は出生後運動ニューロンの未熟遺伝子発現を再活性化しALS病理を抑制する

一、学術的背景と研究の発端 運動ニューロン(Motor Neuron)変性疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS)は、神経科学における重要な研究分野である。ALSは成人発症が特徴であり、患者の運動ニューロンは次第に変性し、最終的に麻痺や死に至る。ALSなどの疾患において、加齢が主なリスク因子と考えられているが、成熟ニューロンが病的損傷に対して易感である一方、若年ニューロンがそれらに抵抗できる分子メカニズムはいまだ明らかでない。既存の研究では、運動ニューロンの成熟に伴って約7,000の遺伝子発現と10万のクロマチンアクセシビリティ領域が大きく変化することが知られている。 研究チームは、胚発生期の運動ニューロンが高い逆境耐性と再生能力...