共役有機フレームワークにおける多金属原子の調節とオレフィン化合物の効率的な酸化

合成化学の分野では、協同、タンデム、あるいは協力効果を実現するために異なる金属中心の数や位置を制御することが長年技術的課題となってきました。多核異種金属触媒は、その高い選択性やカスケード生産、特定の化学変換などの利点から大きな注目を集めていますが、その高い構造的複雑さのため、合成過程は極めて困難です。共有結合性有機フレームワーク(Covalent Organic Frameworks, COFs)は、周期的な分子配列とオープンな構造を持つ材料として、異金属触媒の合成に大きな可能性を示しています。しかし、従来型COFにおいては、機能ユニットがしばしばランダムに分布しているため、金属イオンのモジュール化や相互に関連する配置の実現が難しく、その触媒性能を制限していました。

この課題を解決するため、中国・東北師範大学の研究チームは、分子配位インプリント戦略を提案し、COFs内部の単一金属中心の数と位置を制御することで、多金属アセンブリの高効率な触媒を実現しました。本研究は、異種金属触媒の合成に新たなアプローチを提供するだけでなく、オレフィン化合物の持続的酸化のための高効率触媒ももたらしています。

論文情報

本論文はQinghao MengPanzhe QiaoDan Dengらによって執筆され、研究チームは主に中国東北師範大学化学学院および上海シンクロトロン放射光施設に所属しています。論文は2025年3月13日付でChem誌に掲載され、タイトルは「Modulating Hetero-Multimetallic Atoms in Covalent Organic Frameworks for Efficient Oxidization of Olefin Compounds」です。

研究プロセス

1. 分子配位インプリント戦略の提案と実施

研究チームはまず、Cu²⁺イオンをテンプレートとして用い、COFs内の金属中心の配位環境を制御する分子配位インプリント戦略を提案しました。具体的な手順は以下の通りです。 - ステップ1:Cu²⁺イオンをCOF内のフェノール単位(C–O)、シッフ塩基イミン単位(C=N)、およびピリジンまたはピリミジン単位と配位させ、三座配位(2N, 1O)および二座配位(1N, 1O)部位を形成。 - ステップ2:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA-2Na)溶液を用いてテンプレートCu²⁺イオンを除去し、配位部位を解放。 - ステップ3:他の金属イオン(Pd²⁺、Fe³⁺、Zn²⁺など)をCOFsに導入し、多金属アセンブリを形成。

2. 多金属COFsの合成とキャラクタリゼーション

研究チームは2,5-ジアミノピリミジン(mi)と2,5-ジアミノピリジン(di)をリンカーとして使用し、トリホルミルフロログルシノール(TP)とアミン結合で繋ぎ、多数の窒素原子を有する2次元COFsを合成しました。miとdiのモル比を調整することで異なる金属比率のCOFsサンプルを作製し、X線回折(PXRD)、窒素吸着-脱着等温線、走査透過型電子顕微鏡(STEM)などで結晶性、細孔率、金属分布を詳細に評価しました。

3. 触媒性能試験

研究チームはCu²⁺/Pd²⁺ドープ型COFsのオレフィン酸化反応における触媒性能を評価しました。具体的な実験条件は:1mmolのスチレン基質と0.64mol%の触媒をDMF/水混合溶液(体積比7:1、4mL)中、25°C、1bar O₂雰囲気下で8時間反応させました。核磁気共鳴(NMR)およびクロマトグラフィーによって反応の転化率と生成物選択性を評価しました。

主な結果

  1. 分子配位インプリント戦略の成功:Cu²⁺イオンテンプレート戦略により、COFs内の金属中心の配位環境を制御し、三座配位および二座配位部位を形成、多金属アセンブリによる高効率触媒が実現されました。

  2. 多金属COFsの高い触媒性能:Cu²⁺/Pd²⁺ドープCOFsはオレフィン酸化反応において優れた触媒活性を示し、転化率94%、ターンオーバーフリークエンシー(TOF)は1,184.9 h⁻¹に達し、既存の市販触媒(PdCl₂/CuCl₂)を大きく上回りました。

  3. 触媒の安定性と再利用性:10回の連続使用後でも触媒活性は90%以上を保持し、優れた安定性と再利用性を示しました。

結論と意義

本研究は分子配位インプリント戦略によってCOFs内部の多金属中心の配位環境を巧みに制御し、高効率かつ持続的なオレフィン酸化反応を実現しました。この成果は異種金属触媒合成に新たなアプローチを提供するとともに、工業生産や環境保全のための高効率触媒をもたらします。さらに、COFsの触媒領域における大きなポテンシャルを示し、将来的な高性能触媒の開発の基盤となります。

研究のハイライト

  1. 革新的な分子配位インプリント戦略:Cu²⁺イオンをテンプレートとして導入し、COFs内の金属中心の配位環境を巧みに制御、多金属アセンブリの高効率触媒を実現しました。

  2. 高い触媒性能:Cu²⁺/Pd²⁺ドープCOFsはオレフィン酸化反応で卓越した触媒活性を示し、転化率・TOFともに既存触媒を大幅に上回っています。

  3. 優れた安定性と再利用性:複数回の使用後でも触媒活性は高いレベルを維持し、産業応用においても明るい展望が示されました。

その他の有益な情報

研究チームはさらに密度汎関数理論(DFT)計算を通じて、Cu²⁺およびPd²⁺イオンの触媒反応における電子移動過程を明らかにし、触媒機構をより深く検証しました。また、本研究はCOFsが触媒分野で広範な応用可能性を有することを示し、今後さらなる高性能触媒開発のための重要な参考となります。


本研究は科学的価値が高いだけでなく、工業生産や環境保護においても高効率な触媒を提供し、COFsの触媒分野における大きな可能性を示しています。